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向井亜紀と不妊治療

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 パーティやら商談やらがつづき、ゴールデン街をほっつき歩いていたら、編集者の集まるペグというお店のママに話かけられた。このお姉さんは49才のシャキッとした独身女性で、いつでも若く溌剌としている。歳を聞かなければ、同じくらいかな?と思うだろう。
「向井亜紀どう思う?」と聞かれたので、「すごい時代になったなあとしか思わなかったけれど、『あんなことは金持ちしかできない』と不妊治療をしていた友達がいってたよ」といったら、「あれはエゴだ」といきまいていた。
 「どうしても自分の子供が欲しい気持ちはわかる。でも、人ができないことをやるなら黙ってやれ、不妊治療に失敗している人たちはどうすればいいんだ。子供をドキュメンタリーに出して、その子供が大きくなったときにどう思うんだ」などといっていた。その気持ちもわかるなと思う。

 結婚して不妊治療を受けている人も多いが、働く女性の中には何らかの婦人病を患っている人が多く、同時に、働く間に婚期、出産時期を逸してしまう女性も少なくない。恐らく、ペグさんもわたしもそうした女性の一人だし、わたしの周りにはそんな女性がたくさんいる。働く女性のリプロダクティブヘルス(reproductive=生殖器系 health=健康)は、ぜんぜん守られていない。EDや性感染症を考えると男性のリプロダクティブヘルスも守られていないのだが…女性には出産期限がある。
 そんな中で、あるものは治療をしながら、あるものは結婚・離婚を経験しながら、それぞれが女性として生きることを悩みつつ、徐々にそれを悩まない年齢にさしかかる。
 だからこそ、次の世代のことを考える。
 「自分のDNAが」「わたしの子供が」という気持ちしか持てない人にしか、子供を産めないなら、次の世代でも、その次の世代でも、良い世の中にはなりそうもない。
 どんな子供も、女が母親になる欲望を満たすために生まれてくるわけじゃない。次の世代で、次の世界を作っていく権利と使命がある。餓鬼の魂になんて!

 子宮癌で堕胎せざるをえないかった痛みはわかる。けれど、代理出産の費用は数千万ともいわれ、有名だからできることに違いはないが、命の選択、代理出産、クローン人間は、どうしても神を冒涜しているような気がする。
そこまで自分の遺伝子でなければいけないのか…自分とはそんなに大事なものか? 
 そんな風に、自分と夫と家族のことしか考えない人が、その人の恩恵を受けない人に向かって「わたしのDNAが」というのもナンセンスな話。ピンと来なくてもしょうがないね。できれば聞こえないところでお願いしますみたいな…(^_^;)。

 なにしろ論理が、共依存臭い。なんで子供がいないと幸せじゃないの!? 本人は誰にも迷惑かけていないつもりだけど、そういう理由で生まれたら、子供は迷惑するなあ…。煩悩の無い人はいない。けれど、報道に携わっていた人にあんまり身勝手なことをいってほしくないと、サロンで書いたら、「向井さんは希望の星」とか、「自分の欲望に正直に行動した勇気ある人だ」という反響が出てきた。
 「欲望に正直に」って、視野の狭い純粋さなんて、社会悪の根元。箱庭生活の歪み。隣の芝生を青いと思う気持ちをやめられないと、結果的には、本当の意味でのQOLは得られない。
 仕事とお金と、マイホームと旦那と子供と、ケリーバッグとフェラガモの靴とシャネルスーツと愛人3人居ないと、生きていけないというわけじゃないぞ〜\(^0^)/。

 堕胎や子宮を失ったことの不全感や夫婦の痛みを解決する心の度量は、この夫婦には無かったんだろうか? 次の子供を得ることに盲進することでしか、二人が癒されないのでは、生まれて来た子供も、生まれて来れなかった子供も可哀想な気さえしてくる…色即是空、空即是色。形あるもの、形無いもの、現世もあの世も、等しく大切なことである。

 産めるか産めないかに苦しむ30代の女性に与える影響は大きいと思うので、あえて書くと、高度先進医療での不妊治療の成功率は低く、人工授精約10%、体外受精約20%(厚生労働省)しかない。失敗してしまう8割の人のお手本が、数千万円かけて子供を手に入れるという手法になるのは、いかがなものかな。

 ●治療一回のあたりの平均的な費用は    
   配偶者間人工授精(AIH)5000円〜3万円
   (精子または精液を子宮内に注入する方法)

   体外受精胚移植(IVF−ET)25万円〜50万円以上
   (卵子と精子を体外に取り出して受精させ、受精卵を子宮内に移植する方法)
   顕微授精(ICSI)50万円以上
   (取り出した卵子と精子を顕微鏡を見ながら授精させ、移植する方法)

 これらは健康保険も効かず、国の援助も得られない。このリスクは、一般庶民にとっては、実際大きいと思う。子供が欲しかったら、できるだけ若いうちに不妊治療を始めましょう。若ければ、高度先進医療ではなく、費用も苦痛も少ない。ちょっとした体質改善とバースコントロールで妊娠するらしい。
 高度になればなるほど、不妊治療には精神的にも肉体的にも苦痛が多く、夫婦にとってナーバスな問題になり、治療がストレスになって離婚してしまう夫婦もある。逆に、夫婦のどちらに不妊の原因があるのかを特定するのが嫌だから、治療を受けないという夫婦もある。そこが夫婦の哲学や愛を問われるところでは無いかな?
 「何事も諦めたときが終わり」、という気持ちもわからなくはないが、不妊治療を諦めてから子供を授かった西川知美さんのような人もいる。そこが生命というものの神秘であり、神秘は神秘のままにしておく方がいいこともあると思う。
 女性として、夫婦として、生涯に渡るQOL(quality of life)を考えず、一点に猛進するのは、悲しいことだ。それこそ性に振り回されている人生になる。

 長野県では不妊のお姉さんの子供を妹が代理出産して話題になり、この医師は、医師免許を剥奪された。何が正しいことなのか…?

 そういえば、精子バンクが精子を買いに来たという男友達がいた。ヘッドハンティング会社あたりがやるらしい…精子も商売としてやりとりされ、出産がどんどん産業になっていく。こんなんでいいのかな? これが未来? 効率の良い世の中? わたしのようなバカでも生まれてきて良かったんだから、遺伝子選択なんてふざけんなだよ!
 立派なDNAといっても、古今東西、偉人の息子は馬鹿息子と相場が決まっている。田中角栄は立派な人物だと思ったけれど、真喜子さんは好きだけれどAD みたいだしなあ…。



 

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